正しい家族の形がよくわからないが、機能不全家族についてならわかる。と言っても僕は心理学者ではないので、詳しいことは知らないが、僕の感覚としては子供が「自分は必要とされてないんだな」と思っていたら、それは機能してないのかもしれない。
機能不全家族は誰のせいでもないし、親が意図して作ったわけでもないし、子供の性格もあるし、感じ方もあると思う。
ただ、僕はずっと感じていたし、それは僕の繊細さによるものも大きいと思う。「他の家の子だったらなあ」と何度も思っていたし、まあそれくらいは誰でも思うだろうけど、実際に他の家の子だったという事実を知った時には世界が混乱をきたした。
まあ 正確には祖父母に引き取られたというのが事実であるので、他の家の子ではないと言えばない。ただ、僕にとってはその事実、父と母が本当はいて、父は失踪して、母は死んだという事実を周りの人間が隠していたということに僕は絶望と怒りと恨みでその後を生きてしまう。
まあ 本当はもちろん、幼い僕を思ってのことだったが、中学、高校の僕にとっては騙しやがってという思いしかなかった。それからは世界を、他人を、恨んで生きていたから、世界が歪んで見えていた。僕には心の穴の感触がはっきりとあった。
それから僕は亡霊のように生きていた。「ねえ、ねえ、この穴見てくれないかな。埋めてくれたら嬉しいな」みたいな感じだった。
学生の時はまだ良かったが、世間が社会人のイメージを押し付けるようになると、それになれないギャップに死にたくなったし、何とかそのイメージに追いつこうと必死だった。いい会社、結婚、子供くらいは。。。その価値観はとてもきつかった。
「ロケットマン」のエルトンジョンはただ、父親に愛されたかった。ハグしてもらいたかった。それだけだった。だけど、叶えられなかった。母に認めてもらいたかった。その欠けた感情が心の穴となり、ドラッグやアルコールに溺れていく。
同じなんだな、と思った。依存症の人の多くは心に穴を抱えている。そしてそれを埋めなければと依存行為に走る。そして、いつまでも、成功しても、結婚しても、何があっても満たされない感情を持ち続ける。
これこそが依存症の正体である。僕はその仕組みも機能不全家族だったことも理解していた。でもどうしようもなかった。内観療法もした、カウンセリングもした、精神科も受診した、結婚もした、宗教も経験した、それでも埋まらなかった。
ギャンブルをやめ続けて、自助グループに通って、12STEPプログラムを経験して、1年近く。僕は心の穴を感じることはなくなった。不思議なことだ。僕はもう穴を埋める必要がないし、穴を埋めようと誰かの支配にさらされることもない。
依存症から回復していくとはそういうことなのだ。ギャンブルをやめれば終わりというわけではない。僕の旅もまだまだ続く。エルトンジョンの旅が続くように。