「零落」浅野いにお。

「ねえ 読子さん 東京はいつまでも明るいんだね」

「そうだね みんな寂しいんだよ」

「え?そうなの?何でもあるのにね」

「そう 何でもあるから飽きちゃうの」

「そうなんだ つまんないね」

「そう つまんないの でもね」

「でも?」

「でもね 時には虚無は必要なのよ 満たされるだけじゃ飽きちゃうの」

「そうかな」

「そうだよ」

「だから会ってくれないの?」

「そうよ その方が盛り上がるでしょ?」

「僕はギリギリなのに?」

「そのギリギリが甘美なんじゃない?わかる?」

「わかるよ 切なくてわかるよ」

「それが人生のスパイスなのよ」

「もう少し居てもいい?」

「いいわよ あなたがいたい限りね」

「どこかに行ったりしない?」

「さあね 大丈夫 あなたはきっとわたしをまた探すわ」

「そうだね」

「そうよ」

「僕は君で君は僕。」

「ボクハキミデキミハボク」

ボクハキミデキミハボク

⇒「零落」浅野いにお