虚無虚無君とも30年の付き合いになる。最初は大変だったなあ。こめかみにピストルをつきつけて現れたから。泣いてたっけね。「もうこんな世の中意味ないんだよ」そう言ってたっけ?最近は大人しいけど。なぜか最近は手話になったよねえ。
あ、そう、構ってほしいのね。仕方ないなあ。準備するから。
そう言うと僕は深呼吸してダイブする。
目を開けた時にはヘルメットを手にして、セブンスターを吸っている。横にはハルヤマのHONDA 400four
僕タバコを捨てて、彼に声をかける
「さて、行きますか?しっかりつかまってて振り落とされないようにね」
彼はブンブンうなずき、嬉しそうな顔をする。
僕はfourを跨いで、彼を後ろに乗せる。
スタンドを外して、右手でクラッチを握る。半クラして、シフトダウンし、1速に入れる。
ヘッドホンは今日はドラゴンアッシュで
「GO」とつぶやいて、クラッチを緩める。
鉄馬は走りだし、数秒で僕は再びクラッチを握り、左足でシフトアップし2速に入れる。
3速、4速、5速、身体が加速に置いていかれそうになる。
後ろの彼は僕にしがみついている。それでいい。
高速に乗ってから、120Kmを超す。
周りの景色をどんどん追い抜いていく。
僕は後ろの彼に叫ぶ。
「どうだい?生きてる気分は?」
彼は満足そうにうなずく。
そして僕らは朝まで走る。
僕らの命を揺らしながら。
ゆらゆらゆらゆら
揺らしながら。
夜明けの向こうを目指して走り続ける。