母へ。

母さん、そっちの天気はどうだい?こっちの世界はなんとかウイルスで世界中が大変になっているけどね。もう46年になるんだね。たまに出てくればいいのに。彼岸だしね。まあ、じいちゃんもばあちゃんもおじさんもおばさんもそっちにいるから、そっちの方が賑やかだよねえ。

母さん、うちの子がさあ。もう今年4歳になるんよ。生意気になってるよ。俺のガキの頃に顔がそっくりだけど、まあ 育つ環境は違うから、きっと俺みたいにならないと思うよ。ともかく可愛いよ。母さんは僕の育つの知らんでそっちに行ったからねえ。子供と生きてくってのは自分の人生を生きるのの何倍も楽しいよ。

母さん、僕は最近母さんを思い出すこともなくなってきたよ。まあ ほとんど知らないんだけどね。まあ 僕が生きてるってことは母さんが生きてたってことの証明だろうね。そうそう、母さん、父さんがさあ、40年ぶりに会えたと思ったら、お骨だったよ。同じお墓には入れてあげれなかったけど、まあ どこかで会ったらよろしく言っといてよ。

母さん、最近は少しずつギャンブルをやめて、友達もできるようになったよ。きっと父さんもそういう病気だったんだろう。知ってるよ。父さんとは一度話したかったなあ。まあ 仕方ないね。

母さん、いつか子供と会いにいくね。またね。ばいばい。