
「Hさん、では自助グループに繋がった経緯を教えてください。」
「はい。ギャンブル依存症のHです。今年30歳になりました。去年2人目の子供が生まれました。妻に隠れてオンラインカジノで300万ほど借金があります。もう妻に隠れて支払いもできなくなりどうしようもなくなりました。そんな時インターネットで ギャンブル やめたい と検索して辿り着いたブログに自助グループのことが書いてあり、初めてここに参加させてもらいました。どうか助けてくれませんか。」
Hさんは話しながら嗚咽をもらしながら泣いていた。
会場のみんなの話が一通り終わってから、司会のWさんがHさんに話しかけた。
「Hさん、あまり泣かないでください。ここにいるみんなは同じ悩みを抱えています。ここでは正直に話すことができます。何も手助けできませんが一緒に考えてみましょうよ。」
「ありがとうございます!どうしていいかわからなくて。」
「Hさん、少し面白い話をしましょうか。あなたがここに来ることを予言していた人がいました。厳密に言えば、その人はもういません。1か月前に癌でなくなりました。その人はRさんと言います。このグループを創った人です。Rさんは最後に私に言いました。
もうすぐ30歳くらいの若い子がここに来るだろう。結婚して2人の子供がいるはずだ。そして泣いて助けてくれと言うだろう。その頃には私はいないだろうが、彼が来たらこのブログを紹介してあげてくれ。私のすべてが書いてある。きっと役に立つだろう。そして、彼は私の子供だ。
Hさん、Rさんはあなたにこれをと。」
WさんはHさんに1通の封筒を手渡した。
「そこにはRさんの生前のブログのURLが書いてあるそうです。Rさんは話してくれました。そのブログはあなたのために書いてきたと。私の息子がもし私に似てギャンブル依存症になった時どうすればいいか、ギャンブル依存症からの回復の方法のすべてをこのブログに書いた、どうか息子をよろしく頼むと。」
Hさんはその場に泣き崩れた。
RさんはHさんが1歳の時に離婚しそれからHさんに会うこともなかったと言う。離婚の原因はRさんのギャンブル依存症だった。その後、Rさんはこの自助グループを創った、Hさんのために。Rさんは死ぬ間際までHさんに済まないことをしたと悔やんでいた。そして、せめてHさんが道に困った時にとブログとこの自助グループを創った。いつかここを訪れるHさんために。
Hさんは帰りの車の中でもらった封筒を開けた。
そこにはブログのURLと短いメモが書いてあった。
息子よ
お前はもうどうしようもなくなりこれをもらったのだろう。私は知っているお前がこの封筒を手にすることを。
お前はもしかしたらこの封筒を手にしなくても生きていけるのかもしれない。それはそれで嬉しいのだが、お前は私の息子だ。おそらくこの封筒を手にすることになるだろう。
息子よ、泣くな。
お前は神と共にある、そして私も常にそばにいる。
ギャンブル依存症からの回復の仕方のすべてをこのブログに記した。もう迷うことはない。必ず回復するから。信じろ。
そして、幸せになりなさい
そして、すまなかった。
R
⇒ギャンブル依存症Rのブログ