ラスト・ヘブン  vo1   Nの物語

 では、Nさん 今日のテーマは「懺悔したいこと」です。よろしくお願いします。

司会者の男が僕に話しかける。僕はおずおずとその場に立って、少し考える。僕の周りには椅子に座った6人の仲間がいた。ここは精神病院のミーティングルーム。週に3回僕らは集まって自分達の話をする。

僕らは何かしらの精神障害を持って入院している。僕は依存症である。薬物をやって逮捕されて、ここに収容された。入院してから2週間になる。今までミーティングに参加しても自分のことは話すことはなかった。

だけど、今日は少しだけなら話そうと気が向いた。

「薬物依存症のNです。懺悔、ですかあ。そうですね。生きてることが懺悔ですね。ああ そうですね。何を話せばいいですかね。ああ そうだ。わかりました。あれを話します。僕は猫を殺しました。ある時、会社の帰り道で野良猫と出会ったんです。雨に濡れてかわいそうでした。僕は自分のアパートに連れて帰りました。ほんとはペット禁止なんですけどね。最初はミルクとかツナ缶とかあげて喜んでいたんですよ。僕も可愛がったし、だけど、そのうち、夜中も泣くようになって、アパートはペット禁止なんで。隣の部屋にも聞こえそうで。もうどうしたらいいかわからなくて。ミルクに僕が飲んでた睡眠薬を混ぜたんですよ。そうしたら、猫が吐いてしまってふらふらして、さらに鳴くので、ゴミ袋に入れて海の見える公園に連れていって、袋を開けて覗いたら、ぐったりしてて、僕は怖くなって、ごみ袋を置いてその場から逃げたんです。あの猫どうしたかなあ。僕は怖くなって、それから眠れなくなって、怖くて怖くて、そのうち薬にも手を出すようになって、あの猫に謝りたいです。すみませんでした。」

僕はひとしきりしゃべると椅子に座りこんだ。

いつから僕はこんなんだろうか。あの猫だって、最初は可愛かったのに。鳴くからいけないんだ。父さんに言われていたっけ。「面倒見れないなら、ペットは飼うな」って。家に飼っていた文鳥の世話をしていたけど、ある朝死んでて、「お前は何をやってるんだ!」って冬の外に裸でだされたっけな。ごめんなさい。ごめなさいって言ったのに、バットで殴られたっけな。

生きる資格なんてなかったんだな。

窓の向こうを見ると青い空が広がっていた。

~「ラストヘブン」はフィクションであり、登場人物等の描写は架空のものです。あしからず。~

+1