僕が嘘をつかなくなった理由。

僕は平気で嘘をつく。自分の都合の悪いことは嘘で塗り固める。そんな人生だ。どうせこれからも。そう思っていた。どうせ。

 

そんなある日、ネットで依存症の仲間と親しくなった。いつもギャンブルをしても「今日も賭けませんでした」とつぶやいていた。そのネットの友達はお互いに毎日気にするようになった。

 

「今日もお疲れ様」「今日も賭けなかったよ」「私も」そんな平和な日々だった。だけど、僕はギャンブルをやめられなかった。ある日、スリップをしてギャンブルをしていた。彼女に返事をするのが遅れてしまった。

 

とっさに「残業してたんだ」と嘘をついた。僕は罪悪感でいっぱいだった。その日はギャンブルをしたことよりも嘘をついたことに落ち込んだ。

 

次の夜、僕は正直に彼女に話した。「ごめん、昨日ギャンブルしてしまったんだ、嘘をついてごめんね」「そうなんだ、大丈夫よ、正直に言ってくれてありがと」僕は泣き崩れた。「どうしてもさあ、君には嘘をつきたくなくて、ごめんね」「大丈夫だよ。誰だって嘘はつくわ」

 

僕は彼女を失いたくなかった。彼女の信用を失いたくなかった。だから正直に話した。正直に話すなんて久しぶりのことだったけど、何か大切なことだと理解した。

 

それから僕は彼女に嘘をついていない。誰かを失いたくないという思いが僕を正直な道へと導いてくれた。それは愛を誓った今は別れた妻でもなく、離れて暮らす子供ではなく、ネットで繋がったたった一人の仲間のために。

 

今日も僕らはつぶやきあう。

「今日も賭けないかったよ」

「そ、エライわね」

 

終わり。 R